さかのぼりクリスマス

 でも。

 この1年の間に、ナナと出会って、ナナはおれの彼女になって。こうして、一緒に過ごせる今年のクリスマス。

 こんなに満ち足りた、おだやかな気持ちでいられるのは、ナナのおかげだ。


 スーツから家着に着替え終わって、リビングでそわそわ座って待っていたら、ナナがこっちにやってきた。

 目の前に並べられる、見ただけでサクッとしてそうなから揚げ。チーズの盛り合わせとシチュー。

 ポテトサラダはクリスマスツリーみたいに三角に盛ってあって、てっぺんにはくりぬいたニンジンの星。

 こういうことしちゃうのが、やっぱり可愛い。


「うっわ、ちょーうまそう…」
「えへへー、定番モノですが」
「ありがとうなー。仕事なかったら、一日使っていろんなとこ行けたのにな」
「えーっ、そんなゼイタク言わないよー。おかげでゆっくり準備もできたし」


 ご飯のね、と言って、ナナはエプロンを脱ぎ、おれのとなりに来る。

 ゆるく結ばれた髪の毛。のぞくうなじ。

 クルクルに巻かれたよそ行きの髪型も好きだけど、こういうのも、いい。だから、家で過ごすのもいいよなぁ、と思う。


「ナーナっ」

 座ったのを見計らって、ガバッと抱きついた。

 ナナの肩が小さく跳ねて。下からおれの顔を見上げて、ナナは「もー…」と口をとがらせる。


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