さかのぼりクリスマス

「もう火使ってないからいいだろ」
「…ばか。ヘンタイ」
「ナーナちゃーんっ」
「ぎゃーっ、やめてヘンタイっ!やだーっ!!」

 腕のなかで、笑いながらあばれるナナ。頭をぐりぐり押しつけて、おれは言った。


「ナナちゃん。来年はさ、休み勝ち取ってくるからな」


 落ち着かせるように、おれの頭をポンポンとなでながら、ナナが答える。


「あははっ、勝ち取るって」
「朝から出かけよう。車でドライブ!お迎えにあがりますよ~お嬢さん」
「ははっ、うん、いいねぇ。期待しとく」


 すぐ耳元で、ナナの笑い声がはじける。

 しあわせだなぁ。近くにしあわせの素があるから、妄想だって、あっという間にふくらむ。


「駅で待ち合わせとかも、新鮮かも」
「うんうん」

「そんで、イルミネーションとか、見にいこ。でっかいツリーの前で、写真撮ろ」
「うん」

「それか、高級なホテル泊まってさぁ!正方形のベッドで、ゴロゴロし放題」
「…ん」

「夜景見ながらワイングラス、チーン!みたいな。そういうのもいいよなぁ」
「……うん」

「ずっとさ、一緒にケーキ食おう」

「……ずっと?」

「うん。来年がチョコケーキだろー?再来年がチーズケーキでー、あー…次の年がモンブランでー…ケーキ他、種類あったっけ?」

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