さかのぼりクリスマス

 ナナの返事はなかった。

 さっきまでは元気にあばれていたナナは、おれの腕のなかで、しぼんだみたいに、小さくなっている。

 どうした?そう、声をかけようとしたとき。


「…ねえ、ハルちゃん」


 かぼそい声で、ナナが言った。


「ん?」
「”ずっと”って、ウソツキな言葉だよね」


 思いもよらないセリフに、おれは目を丸くした。


「…え?」
「今日ね。一人で準備してる間に、ふと、思い出しちゃってね。今まで…うん。今までのこと。いろんな、クリスマスがあったなぁって」


 無意識に眉間にシワをよせてしまったおれに、ナナはうつむいて、「怒らないでね」と言った。

 ナナが、今まですごしてきたクリスマス。

 おれと出会う前の、おれが知らない過去のこと。


「そのときはね、本当に”ずっと”って、思ってたはずなのに。ずっと、一緒にいたいって。ウソじゃないのに……でも全部、ウソになっちゃった」


 ナナの声が、すこし上ずっている。


「ハルちゃんも」


 おれの名前を呼んだあと、ナナは言った。


「きっと、ほかのだれかに”ずっと”って、言ったこと、あるよね」


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