Street Ball
内心の苦笑いを平静な言葉に変え、残っていたジンライムを飲み込んだ。


そんな俺の問いに、碧は細い首を左右に巡らせる。


「辞めたの。それで私の前からも姿を消したわ…もう十年近く前の話しよ。」


その悲しげな表情を見て、何と言って良いのか分からず視線を落とした。


磨き抜かれた一枚板のカウンターは、色褪せたジュークボックスの光を、濡れたように伸ばしている。


ぼんやりしていると、鼻先にベビードールの香りが舞う。


カウンターの下で、碧の足が俺の足に絡み付いた。


「次、行きましょうか。」


悪戯に微笑む碧の目尻に、微かな皺が刻まれた。


さっきの話しを聞いても、十以上は歳が違う筈だけど、それを嫌だと感じる気持ちは微塵も無い。


寧ろ、そこに強く惹かれて魅力にすら感じる。
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