Street Ball
今、目の前にボールを差し出されたら、俺は汚い物を見るかのように顔を顰めるだろう。


直視する事すら、戸惑う。


「世の中には、知らない方が良い事も有るのよ…。」


俺と同じように目を伏せた碧の表情は、悲しく曇っていた。


だが、知らない方が良かったとは思わない。


本当の事を知ったからこそ、俺はあの場所でこれ以上プレーしたくないと思えたのだから。


唯一、俺が熱くなれたバスケ。


幼い頃から、俺にはそれしかなかった。


これから先、俺はバスケをしても良いのだろうか…。


俺の所為で堕ちていった人が居るかも知れないと思うと、バスケをしたいとは思えなかった。


また、前のような退屈な日々に戻っていくのか…。


目的もなく覇気もない、ただ惰性で生きているだけの無気力な日々。


俺からバスケを取ったら、何も残らないって分かっていたけど、陰で堕ちていく人が居るよりはずっとマシだな。
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