Street Ball
「なぁ泰二、富さんは?」


「さぁな。俺と鉄が来た時には、もう居なかったぜ。」


指定席ともいえるレジ裏のパイプ椅子に、雑誌を眺めている富さんの姿はなかった。


「富さんがこの場所に居ないのなんて、今まであったかな?」


「いや、初めてだろ。」


…だよな。


妙な胸騒ぎを覚えつつ、先にコートへ行ってしまった泰二の後に続いた。


[HEAT]の登場と共に、地鳴りのような声がギャラリーから発せられる。


そして、その漂う空気の熱さは、異様とも言える程だった。


「なんだよ、勝敗予想が二のチームにも、結構期待してんじゃねーか。」


[REEF]と[HEAT]で二分される歓声に、満更でも無い様子の泰二。


「翠ちゃんも最前列で見てるぞ。」


俺より先に翠の姿を見つけた鉄が、にやけた顔でフェンスを指した。
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