Street Ball
仕方なくアキの言うとおりに付いていくと、やはり碧のマンション前に走り付いた。


エントランス前の道路脇に、白いバンが一台。


全開にされた助手席側の窓から、男の腕とタバコの煙が漂っているのが見える。


俺とアキが近付いてくるのを察したのか、助手席のドアが開いた。


伸びたパーマ頭をバンダナで押さえ、黒いシャツを着た男。


街灯の灯りが映り込んだ、黒いレンズの丸いサングラス。


「どういう事だアキ?お前一人で逃げてくる予定だった筈だぞ。」


立ち止まった俺達に、その男は右足を引きずりながら近付いてくる。


右足が全く機能していない。


思い返してみれば、初めて会った時から今まで、レジ奥で雑誌を眺めている姿しか見てなかった。


あれは動こうとしてなかったんじゃなくて、動けなかったのか…。


「逃げられる奴は逃がしてきたよ。富さん、やっぱり俺、一緒には行かない。」


二人の会話を聞いても、俺は今一つ事情が飲み込めずにいた。
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