Snow mirage

「嘘でしょ」

冗談っぽく笑うと、それに応えるように彼が口角を引き上げる。

そのとき彼の後ろから誰かがぶつかってきた。

彼が押されて前に少しよろけたとき、どこかで微かに鈴の鳴る音がする。

けれどそれは空耳だったのか。すぐに雑音の中に消えた。


「ごめんなさい」

彼にぶつかったのは、こちらに背を向けてイルミネーションを撮影していた若い女の子だった。


「大丈夫」

彼が優しく笑いかけると、彼女の頬が瞬時に紅く染まった。

けれど隣に立つ私に気付くと、はっとして残念そうに離れて行く。

それを見て、私は微笑むだけで女の子にあんな反応をさせられる人にふらふらと付いてきてしまったのだと初めて自覚した。

青みがかったグレイの髪と濃い緑色の目をした彼は、この寒い日にセーター一枚というおかしな格好をしているくせに、そこに違和感を覚えさせないくらい魅力的なのだ。

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