White X'mas
私の愛器は、1900年代生まれのバイオリン。
ゴールドの下地にオレンジレッドのニスを重ねた、モダン・イタリーらしいとても綺麗な色をしている。
有名バイオリニストでもない駆け出しの私には、もったいないくらいの素晴らしい楽器だと思う。
たった一度でも、自分の目で見ることが出来て良かった。
愛器の音と感触だけでなく、姿を思い描くことができるおかげで、私は一度は諦めかけたプロの演奏家としてステージに立つことができているのだから。
会場に着くと私達はまず、会場の温度と湿度を確認してコートを脱ぐ。
大きく息を吸い込んで空気を味わうのは、文字通り肌で感じるため。
バイオリンはとても繊細で、デリケートな楽器。
開けた途端にバリッと割れた、なんてことにならないよう、徹底した管理が求められ、ここに運ぶまでの間も最新の注意が払われている。
ほんのりと暖かい、適度な湿り気が感じられたら、ケースをバッグから出し、会場を少しウロウロして。
挨拶なんかを済ませた所で、初めてケースに手をかける。