White X'mas

「いい?」
「うん」

管理を任せている母の短い答えを聞き、私はケースの中の愛器に手を滑らせる。

「さあ、明日は本番よ。まずはリハーサルで素敵な音を聞かせてね」

高価なことで有名なストラド……ストラディバリウスやグァルネリ、アマーティなどに値段は遠く及ばないが、私はこの愛器の音が好きだ。

艶やかに苦もなく伸びる高音と、甘く響く安定した低音。

このバイオリンは、私が出したいとイメージした音色をきちんと紡ぎ出してくれる立派な楽器だから……

好きな理由をあげるとするなら、そんなところだけど。

この楽器は今や、私にはなくてはならないものの一つ。

一緒にいるのが当たり前の、ジョイのような存在だ。


そんな愛器で、私は様々な曲を演奏する。

何百年も前に作られた偉い作曲家が作ったクラシックやジャズ、アニメの挿入歌だってOK。


このバイオリンを奏でる時の、満たされた気持ち。

普段の自分を無意識のうちに縛りつけている、様々なストレスやコンプレックス……何もかもから解き放たれて、自由になれるような感覚。

それを、少しでも多くの人に知って欲しいから。


私は想いをこめ、愛器と共に音を奏でるのだ。


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