White X'mas
今日の天気は、晴れのち曇り。
そう告げるラジオの声を聞きながら簡単な朝食を済ませると、私は食器をキッチンに運び、シンク下の引き出しを開けた。
すぐに駆け寄って来る小さな足音がして、私の隣に暖かな気配が寄り添う。
彼は、盲導犬のジョイ。
目の見えない私を助け、一緒に生活をしてくれている大事な存在。
「ジョイ。今日はお出かけだから。よろしくね」
ジョイ専用の器にドライフードをいつもの半分ほど計り入れると、所定の場所に置く。
もちろん、ジョイはまだ食べない。
2歩下がった私の足元に座り、私がいいと言うのを大人しく待っている。
すぐにあげてもいいのだけれど、ジョイの忍耐力を試したかった最初の頃、長い”待て”をさせるというイジワルなことをしてみたりもした。
けれど、盲導犬として厳しい訓練を受けて来たジョイが普通の犬のように騒ぎ立てたり、勝手に食べ始めたりすることはなかった。
「ヨシ!イイコね、ジョイ」
あまりにも長い時間、大人しく”待て”をしているジョイに私の方が先に不安になってイジワルは長く続かず、今はこうして数秒だけの”待て”にしている。