史上最低のハッピークリスマス
よく考えたら、黙っていれば見てくれは悪くないし、まぁ…喋ってもこれだけ明るかったら彼女の1人や2人くらい、いそうなのだが。
だが、それを言ったら何倍にもなって言い返されそうだから、麻子は言わずにいる。
自分も、気付いたらあっという間に、こんな歳だ。
これでもいい大人なんだから、今までに結婚だって考えたことのある相手がいなかった訳でもない。
――それに、明日の23日は。
「明日の夜は、ヒマじゃないんだろ?」
いつの間にか、正幸がキッチンの入り口にもたれかかって立っていた。
事務所のキッチンは狭く、1人でいるだけでいっぱいいっぱいなのに。
異様に近い距離と、今のセリフを言った時の正幸の視線に、麻子は顔を上げられないでいる。
「今年も、待つつもりか?」
何処か咎めてるような口調。
会社の飲み会で、少し酔った麻子は、つい弾みで正幸に話してしまったのだ。
今となっては、話さなきゃ良かったと後悔の山だが。
「まぁ…やることないし…どうせヒマだし…」
いつもの砕けた口調が出来ない。
それは、正幸が何処かこっちを責めているように感じたから。
「もう終わった事だろ。いつまでも過去にそんなにこだわらないで、前に進もうとか思わないのかよ?」
更にこっちににじり寄り、正幸は言う。
「ちょっと…近すぎ…」
キッチンの一番奥に追いやられながら、麻子の頭の中に色々な想いが巡る。
海が見える公園。
明日の夜は、麻子はそこで過ごす。
何時間公園にいるのかは分からないが、とにかく麻子は12月23日の夜は、綺麗な夜景をそこで見て過ごす事にしている。
絶対に来ない誰かを、待ちながら。
だけどそれは、麻子のプライベートな問題で。
決して、正幸がどうこう言う事ではない筈なのに。
「ホント、バカだよな」
ため息をついて正幸が事務所の机に戻った時、ヤカンのお湯が沸いた。
正幸の咎めるような態度は変わらない。
決して正幸に迷惑をかけている訳でも、悪いことをしている訳でもないのに。
何故か、心が痛かった――。
★ ★ ★
次の日。
12月23日は、祝日だ。
クリスマスイブの前日という事もあり、街は人でごった返していた。
あちこちでクリスマスソングが流れ、鈴の音やベルの音が聞こえてくる。
夜になれば、クリスマスツリーにはイルミネーションが灯り、道行く人達は、そんな光景にとても幸せそうな笑顔を浮かべている。
麻子はそんな中、マフラーを手で押さえながら足早に歩いていた。
このショッピングモールを抜けて少し歩けば、公園に着く。
何故、毎年こうやってここに来るのか、まだ自分でもよく分からない。
思い出の場所だから?
まだ、あいつが会いに来てくれるって思っているから?
未練があるから?
「……バカみたい…だよね」
正幸が昨日、どうしてこっちを咎めていたのかも、よく分かる。
絶対にもう会えないあいつを、こうやって待つなんて。
――バカだ。
分かっては…いるんだけど。
だが、それを言ったら何倍にもなって言い返されそうだから、麻子は言わずにいる。
自分も、気付いたらあっという間に、こんな歳だ。
これでもいい大人なんだから、今までに結婚だって考えたことのある相手がいなかった訳でもない。
――それに、明日の23日は。
「明日の夜は、ヒマじゃないんだろ?」
いつの間にか、正幸がキッチンの入り口にもたれかかって立っていた。
事務所のキッチンは狭く、1人でいるだけでいっぱいいっぱいなのに。
異様に近い距離と、今のセリフを言った時の正幸の視線に、麻子は顔を上げられないでいる。
「今年も、待つつもりか?」
何処か咎めてるような口調。
会社の飲み会で、少し酔った麻子は、つい弾みで正幸に話してしまったのだ。
今となっては、話さなきゃ良かったと後悔の山だが。
「まぁ…やることないし…どうせヒマだし…」
いつもの砕けた口調が出来ない。
それは、正幸が何処かこっちを責めているように感じたから。
「もう終わった事だろ。いつまでも過去にそんなにこだわらないで、前に進もうとか思わないのかよ?」
更にこっちににじり寄り、正幸は言う。
「ちょっと…近すぎ…」
キッチンの一番奥に追いやられながら、麻子の頭の中に色々な想いが巡る。
海が見える公園。
明日の夜は、麻子はそこで過ごす。
何時間公園にいるのかは分からないが、とにかく麻子は12月23日の夜は、綺麗な夜景をそこで見て過ごす事にしている。
絶対に来ない誰かを、待ちながら。
だけどそれは、麻子のプライベートな問題で。
決して、正幸がどうこう言う事ではない筈なのに。
「ホント、バカだよな」
ため息をついて正幸が事務所の机に戻った時、ヤカンのお湯が沸いた。
正幸の咎めるような態度は変わらない。
決して正幸に迷惑をかけている訳でも、悪いことをしている訳でもないのに。
何故か、心が痛かった――。
★ ★ ★
次の日。
12月23日は、祝日だ。
クリスマスイブの前日という事もあり、街は人でごった返していた。
あちこちでクリスマスソングが流れ、鈴の音やベルの音が聞こえてくる。
夜になれば、クリスマスツリーにはイルミネーションが灯り、道行く人達は、そんな光景にとても幸せそうな笑顔を浮かべている。
麻子はそんな中、マフラーを手で押さえながら足早に歩いていた。
このショッピングモールを抜けて少し歩けば、公園に着く。
何故、毎年こうやってここに来るのか、まだ自分でもよく分からない。
思い出の場所だから?
まだ、あいつが会いに来てくれるって思っているから?
未練があるから?
「……バカみたい…だよね」
正幸が昨日、どうしてこっちを咎めていたのかも、よく分かる。
絶対にもう会えないあいつを、こうやって待つなんて。
――バカだ。
分かっては…いるんだけど。