冷徹ドクターに甘やかされてます
「…はい。彼女がいるからこそ、尚更婚約の話は受けることが出来ません」
「……」
(春田先生…)
院長先生の前でも、言い切ってくれた…
揺らがないその姿に不安ながらも嬉しく思ってしまう、自分がいる。
「だが、彼女の弟は長いことうちに入院しているらしいじゃないか」
「はい。俺の患者です」
「お前への気持ちも、そういった憧れや信頼を履き違えているだけなんじゃないのか?」
「……」
私の気持ちは
春田先生への信頼の、履き違え?
「それか弟の為にお前を利用しようとしているとか、そういった可能性はないのか?」
「…、…」
春田先生を利用したいだけ?
ううん
そんなわけ、ない
違うよ
そうじゃない
そうじゃない、のに
「っ…」
その気持ちを訴えようとドアへ手をかけようとした、その時
「院長」
「…?」
「俺の昔話を、聞いてもらえますか」
「……」
響いたのは、春田先生の冷静な声