【短編】イブの夜に抱きしめて
イブの夜に抱きしめて
……クリスマスは一週間後。


「クリスマスは雪か」



 静かな夜のオフィス、鈴木課長は呟いた。私は手を止め、課長の席を見やると課長はモニターを真剣に見ていた。時々ポツリと独り言を言う課長、噂では隣の支社の稲田という女性社員とつきあってるらしい。私が入社したときに聞いた噂だからかれこれ3年になる。

 年頃の課長、年頃の稲田さん……3年ともなれば秒読みなのかなと私は想像してる。結婚、そんな言葉がチラつく時期じゃないかって。


「ホワイトクリスマスになりそうですね」
「ああ。山田はケーキは予約したか?」
「はい」


 今年は奮発して有名パティシエのケーキを予約した。1ホール8000円、それをひとりで食べる。
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