【短編】イブの夜に抱きしめて
 本当は誰かと食べたいって思うけど、そんなのは高望みだとあきらめてる。だって意中の人はステディな彼女がいるから。

……そう、鈴木課長。

意中というか、憧れに近いけれど。


「そうか。いいクリスマスになるといいな」
「はい」


 普通に答えて仕事に戻る。鈴木課長とそんな風になれたらって漠然と考えたりするけど、やっぱり雲の上の人。


 残業を終えてデスクの上を片付ける。


「鈴木課長、お手伝いすることありますか?」
「いや。時間も遅い。上がって」
「はい、じゃあお先に失礼します」



 一礼して私はオフィスを出た。手伝いたかったな、って少し残念。でも遅いからって気遣ってくれてのは嬉しい。女の子として見てくれてるのかな、って。

だから何となく期待しちゃったり。




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