クリスマス・イブは金曜日
あーあ、もっとムード良い感じでとか、もっと格好良くとか、色んな理想があったのになぁ。
いくら経験が無い俺でも、これがさすがにマズかったのは分かる。
これじゃ、振られないものも、振られるよなぁ。
俺が暫く自分で呆れてると、愛川が小さく吹き出す声が聞こえた。
「そうか…、そういう事なのね……」
そういう事……って、どういう事だ?
ってか、愛川、笑ってるし。
「じゃあ、こちらこそ、宜しく」
俺の前に左手が差し出されたから、思わず反射的に握手する。
握ってから、それが愛川の肯定の返事だったと、遅ればせながら気付いた。
「えっと、あの……」
「優美子」
「え?」
「優美子って呼んでよ、カレカノなんだし。私も俊仁って呼ぶから」
俺が優美子って呼んで良い事より、愛川が俺を俊仁って呼んでもらえるよりも、カレカノって言葉が、何だか照れくさかった。
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