君には聴こえる


駅からほど近い小さな創作料理屋さんは、私たちの行付けの店。彼と再会して付き合い始めてから、毎年クリスマスはここで過ごしている。


テーブル毎に仕切られた個室を、温かみのあるオレンジ色の電球が染め上げている。街の喧騒から遮断された空間は、ゆっくりと時間が流れていくようで落ち着く。


向かい合わせに座った彼が、頬杖をついて身を乗り出した。


「あのクリスマスツリーのトップスターが、僕らを導いてくれたんだと思う」


なんてキザなことを言うけど、私も同じことを思っていた。


あのクリスマスツリーとは、駅下デパートの出入口の両脇に飾られた大きなクリスマスツリー。


トップスターとは「ベツレヘムの星」のこと。キリストの誕生を東方の賢者に知らせ、彼らをキリストの許へと導いた星。


さらに、私たちをも導いてくれた。



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