夏色の約束。~きみと生きた日々~


いつも一緒にいたから気付かなかったけど、なつはこんなにもあおちゃんのことが大好きだったんだね。


「そろそろ出るわよー。早くしないと、卒業式に遅れちゃうわ」


再び、お母さんのせわしない声が聞こえた。


卒業式。


前までは魅力的だったその響きが、今はなんだか切なくて。


途端に、あおちゃんと過ごした6年間がなつの頭の中をよぎる。


あおちゃんが倒れてから、約一週間。


そっか………。


もう、今日は卒業式なんだね。


なつはグッと涙をこらえながらあおちゃんを思い出し、そっと頬を緩めて、誰もいないはずの窓の下に向かって少しだけ微笑んだ。


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