ド天然!?魔女っ子の秘密
まるでテレパシーのような頭に響く声。

『何故あの魔法を使わなかったのだ!?』

それは紛れもなくサファイアのもの。


どうやら翔太の体から出て、ただ魂となってそこにいるらしい。

ただ、あたしの魔力も限界を迎えていて、その姿は見ることはできないのだけど。


「ごめんなさい、サファイアさん。あたしにはあの魔法は使えません」

『何故だ?我はお前の敵であったはず…』

「そうだとしても、できません。

あの魔法を使えば貴方は貴方を待つ運命から逃れられ自由になれる。

だけどそれは貴方の存在が消えることを意味している」


あの魔法を使えばサファイアの霊は消えてしまう。

それは、天国や地獄へいく、という意味ではない。成仏するわけじゃない。


その存在自体が、消えてしまうの。


「それはできません。

だって貴方は確かにここに存在していて、そして貴方がガーネット様に恋をしていたその気持ちは本物だから」


サファイアの存在を消したらその気持ちまで消してしまうことになる。

そうなれば、サファイアの恋心までも否定してしまうことになる。


そんなの、間違ってる。


気持ちを伝えられなかったからって、その気持ちがなかったわけじゃない。

それはあたしが一番知ってる。


だから、できない。

それに、その魔法を使ってしまえば、サファイアだけじゃない。あたしの気持ちまで否定してしまうそうになるから…


『…残酷だな』

フッと鼻で笑うような声が聞こえた。


残酷、か…

そうかもしれない。
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