いらっしゃいませギルド相談の登録はこちらでち!
第一章 トリップのはじまり
「いらっしゃいませ、ギルド相談の登録はこちらで……ち」


「また舌噛んだわね、エミル」


「ごめんなしゃい」

 私はエミル、日本でOLをしていたんだけどなぜかこの闇ギルドで相談員をしてます。私は異世界に『界を渡って』やってきたようですがよくわかりません。

 気がついたらここにいて、このお姉上司にこき使われる身分となっていたのです。お姉さんというよりは姐御、ニューハーフといったほうが正しいでしょうか。私の目の前にいるお兄さんは実はお姉さんだったんです。
 

 闇ギルドのカウンターで座ってにこっと笑う私にまた舌噛んだわね、といってごつんと頭を叩く私の上司は長いふわりとした金髪をたらし、青い目の美形の見た目はお姉さんですが中身はお兄さんです。
 

 ええまだお兄さんです。まだ何もしてないと言ってましたし、黒いドレスがよく似合ってます。少しだけごついですが。
 つまりニューハーフさんでした。
 まず事のはじまりはこのお兄さんがなぜか商店街の福引をやっていたことからはじまります。




『へぇ、特別チケットの福引券』

 商店街の福引は終わったはずでした。ええそうでした。でもしかし食パンを買いましたら、その店で一枚のチケットをいただいたのです。私は不思議
に思いながらもチケットに書かれた場所に向かいました。
 
 すると綺麗な金髪青い目のお姉さんががらがらの抽選会の前にいてもう最後ですよ。とにこっと笑って声をかけてくれたのです。
 

 福引は一ヶ月前の秋祭りに終わったのになと思いながらも、私は白いテントの前にたつお姉さんにチケットを渡すとはいはいと受け取ってくれます。
 
 そしてお姉さんは『はい一回』といってガラガラを私へと指差したのです。私は回し始めるところんと金の玉がひとつでてきました。


「あら大当たり、特等の旅行券よ」


「そうなんですかやったあ!」


「異世界にご招待よ」



「え?」

 
 がらんがらんと勢いよく鐘を振るお姉さん。私は目を丸くしてそういえばここ何の賞品もおいてないと違和感に気がつきます。普通何か後ろにおいてあるはずですよね? 何等が何という商品名すら書いてないのですよ。


 私がそれに気が付くとにっこり、とお姉さんは微笑みます。白いふわんとした店員服、黒のエプロン、でもちょっと体形がごついかなと思った途端。
 
 はいどうぞ、とお姉さんが両手を広げると、すとーんと道路に穴があいてしまいました。私のちょうど下ですよ下、お姉さんの微笑を最後に私はアリスさんよろしく穴の中に落ちていってしまったのでした。
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