蜜恋ア・ラ・モード
「チビなお前に、イッチャン上のダンボール箱は取れないって。諦めて、荷物の片付けでもしてろ」
「チビって……。洸太はやっぱり一言多い」
なんて唇を尖らせてみたけれど、それが洸太の優しさだってわかってる。でも素直じゃない私は、『ありがとう』って言えなくて。
洸太には昔から、こんな態度をとってばかり。可愛らしさの欠片もない。
なのに洸太は、こんな私のためにいつも一生懸命で。
どうして? って聞きたくなる時もあるけれど、近くに居すぎてそんなこと聞けなくて……。
「今晩、ここでご飯食べてく? 大したものはできないけど」
「おっ、いいのか? 都子の飯食うの久しぶりだし、楽しみだな」
洸太がとっておきの笑顔を見せると、『ありがとう』の代わりに得意な料理を振る舞うことしかできない私がいて。
一番奥の部屋にダンボール箱を運んでもらうと、中身をタンスへとしまい始めた。
「シャワー、サンキューな。結構汗かいたからさっぱりしたよ。Tシャツもありがとな」
「貰い物だけど、大きいサイズがあって良かった。簡単なものばかりだけどご飯できたから、こっちに来て食べて」
「おう」と一言席に付くと、ごく自然に「いただきますっ」と言って食べだす洸太。その姿を見て、いつもと変わらぬ洸太にホッと笑みをこぼす私。
保育園からの仲は、家族同然で。そばにいるのが当たり前で。
母の言う通り、洸太は私のことが好きなのかな?
旨い旨いを連発して私の料理を食べている洸太を見ていると、そんな疑問が確信に近づいていって。
そして近い将来母の期待通り、洸太と一緒になる日がくるのかもしれないなぁ~なんて思い始めていた。
彼、有沢薫(ありさわ かおる)が私の前に現れるまでは───