蜜恋ア・ラ・モード

「思ってたより、都子さんってドジなんだね」

「すみません……」

「いや、そんな都子さんも可愛いけど、最近ちょっと疲れてるんじゃない？　明日の日曜日は講習ないんだよね？」

「うん、ないけど」

「じゃあ、気分転換にドライブにでも行こうか？」

「ドライブ？」


こんな気持ちのまま、薫さんとふたりでドライブに行ってもいいんだろうか。

洸太への気持ちに気づく前なら、両手放しに喜べたのだろうけれど。

でも確かに最近の私は、余計なことを考えすぎて疲れているような気もする。

心の中でざわついているものが少しは静まってくれるかもしれないし、外の気持ちのいい空気を吸っていろんなことを考えるにはいい機会なのかもしれない。


「そう、ドライブ。都さん特製弁当持って……と言いたいところだけど、それじゃあまた疲れるから」

「お弁当くらい作るよ。定番の簡単なものでいいなら」

「いいの？　じゃあ決定だ」


話をしながらも薫さんの手は動いていて、傷口に消毒をすると大きめの絆創膏を貼ってくれる。

目の前にいるのは、いつもと変わらない優しい薫さん。

でも何か違うものを感じてしまうのは、私の気持ちが変わった証拠なんだろうか。


「はい、終わり」


そう言ってぽんと頭に手を乗せられても心苦しい気持ちが広がっていくばかりで、俯いたまま素直にありがとうさえ言えずにいた。