蜜恋ア・ラ・モード
もう何で、あの日のこと思い出しちゃうかなぁ、私。
洸太が村野くんを殴った後、それはそれは大変で……。
洸太の遠慮のない力で殴られた村野くんは、大量の鼻血を出した上に前歯が二本折れてしまって。
『元はといえば俺が悪いかもしれないけど、本気で殴ることねーだろがっ!!』怒り心頭の村野くんも洸太を殴り乱闘勃発。ちょっとした騒動になってしまい、先生数人が止めに入って何とか治まったんだよね。
その後も卒業まで、度々問題を起こした洸太だったんだけど。社会人となって、少しは落ち着くと思ったのに。
まったく成長してない?
ホント、いつまでたっても世話が焼ける幼なじみだ。
ため息をつき現実に目を戻せば、柳川さんと梅本さんはまだ洸太話に花咲かせていて。有沢さんと高浜さんは、そんなふたりを見て苦笑していた。
もう!!
昔のことも今日のことも、どれもこれも全部洸太のせいっ!!
今度会ったら、絶対になにか奢ってもらうんだから。そうでもなきゃ、腹の虫が収まらない。
寿司? 鉄板焼き? それとも……。
うんと高いものを食べてやるんだから!! それもお腹いっぱいね。
「都子先生?」
ひとり食い意地の張ったことを頭のなかで繰り広げていると突然名前を呼ばれ、ハッとして我に返った私の目の前にはさっきと同様有沢さんの顔があった。
「うわっ」
大きな声を上げて慌てて二~三歩下がり、心拍数の上がった心臓のあたりを右手でギュッと押さえる。
「あ、有沢さん? そのいきなり目の前にいるの、止めません?」
心臓に悪いです……。とは口に出さず。
その代わりと言ってはなんだけど、ほてりを感じる顔はきっと真っ赤になっていることだろう。