Treasure~もう一度、恋~
それから

“瞬くん”が、“瞬”になって

俺は、アパートを解約して、有希と暮らし始めた。




大学に行きながら、劇団で芝居をして、バイトして

有希の待つアパートへ帰る





幸せだった





ずっと、ずっと

続くと思っていた





「瞬ってば、なにむくれてんの?」

「…」

「しゅーん?」

「またオーデション落ちた」

「ありゃ」

「…俺って、才能ないのかな」

「落ち込んでる?」

「…当たり前だろうが」




有希は、だまって俺の隣に座ると、俺の肩にこつん、と自分の頭をのせた。





「才能があるかないか、あたしにはわかんないけど」




有希は、言葉を選ぶように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。




「瞬が誰よりも芝居を好きなこと、知ってる。
 誰よりも努力してることも、知ってる。」




ああ

有希の声は

言葉は




「だから、あたしはいつだって瞬の一番のファンだよ」




どうして

こんなにも、沁みるんだろう




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