5年目のクリスマス

「今日、志奈子と二人で会うために社長の息子ってのを初めて利用した。部長に頼んで俺が志奈子を口説くための場を設けてもらったんだ。社長の息子の頼みを断る部長なんていないだろ」

「口説くって、おかしいです。私は去年先輩に振られてるのに」

「ああ。あの時の俺は、志奈子の気持ちを読み違えてた。あれから志奈子は俺と二人きりになるのを避けてたもんな、かなり堪えた」

苦しげな先輩の声。

更に先輩の種明かしは続く。

「まず。会社を経営している志奈子のお父さんは、志奈子に婿を迎え、その婿には自分の会社で働いて欲しいと考えていた。だけど、俺が志奈子をかっさらおうとして慌てて反対したんだ」

「あ、あの……全く理解不能なんですけど、私が婿を迎えるとかかっさらうとか、どういうことなんでしょう?」

突拍子もない言葉を次々と聞かされて、私の脳内は混乱極まりない。

それに、父さんの会社の後継者は姉さんの旦那さんだと決まっているのに。

大学時代からの恋人と結婚した姉さんが社長になるよりも、その分野を学んでいた旦那さんが社長に就いた方がいいと父さんも言っているのに、どうして?

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