さよなら魔法使い
長い間見ていなくても、よく覚えている。

目頭が熱くなり、リースは口元に力を入れた。

まるではらはらと雪が降っているように感じさせる不思議な模様、その色彩の変化は七色よりも多い。

スノードームの様な、ある町の風景を描いたみたいに見る者を虜にする魔法の飾り。

このオーナメントが魔法使いの最後の魔法だった。

あれから何度ノエルを迎えただろうか。

時間が来たのだと、そう言って帰っていった魔法使いとはもう記憶の中でしか会えていない。

思い出した日は彼の夢を見て、静かに涙を流しながら目を覚ますのだ。

切なくも甘い心を震わせる大切な出来事はこんなにもリースを戒めている。

何年もこのオーナメントを見ないようにしていたのだ。

そんな無駄な努力も今日を限りに止めてしまおう、余計に苦しくなるだけなのだから。

「久しぶりね。ジベル。」

そう囁いて指先でそれに触れる。

僅かに震える指先で、軽く撫でる事くらいしか今は出来そうにないのだ。

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