さよなら魔法使い
「相変わらず汚ねえ部屋だな。」

家族の者ではない声にリースの体が跳ねる。

一気に鼓動が高まり息苦しくなった胸を押さえて振り返った瞬間、信じられないものを目にしたのだ。

見覚えのある姿に目を見開いて驚きを表現する、あまりの衝撃に呼吸を忘れてしまった。

「よお。久しぶりだな、リース。」

それは紛れもなく魔法使いジベル、彼だった。

笑った顔も何気ない仕草も、リースの覚えているあの時の記憶のままのジベルがそこに立っている。

全身の血が一気に逆流するようなざわめきに体を震わせた。

リースは震える吐息に色を付けてようやく、なんとかその口から声を発したのだ。

「ジベル。」

言えたのはただその名前だけ。

「ジベル。ジベル…ジベル。」

言葉にすることが出来たのはその名前だけ。

他に言葉は無くてもリースの思いはそれだけで十分ジベルの心に伝わった。

会いたかった。

どうしようもなく会いたかった。

ずっと忘れられなかった。

そう思うとリースの涙も感情もたがが外れたように流れ出し、助けを求めるように彼女はジベルに向けて両手を伸ばした。

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