イヴ ~セカンドバージン~

 「葛城先生、この頃元気ないようですが…。俺でよかったら相談に乗りますよ。」

あんたはそれしか言えないのか。上川先生の態度も存在さえもイライラする。
あんたが原因でこうなってるのよ!!って叫んでやりたかった。

日にちだけが過ぎていき、なんの解決方法もないまま気持ちだけが焦っていく。
そんな時萌奈に言われた言葉が脳裏に浮かんでは否定することで消えて、そしてまた浮かぶ。

 「もうそれしか方法はないわよ」って頭の中で悪魔が囁くように。

 「上川先生、仕事が終わったら相談に乗ってもらえますか?」
彼に考える時間など必要ないようでニヤリと口角を上げると二つ返事で頷いた。

自分から口にした言葉とはいえ後悔という二文字が頭に浮かぶ。


彼とふたり並んで歩くのは何年ぶりだろう。

 「話しをゆっくり聞けるところにでも移動しよう。」
彼の魂胆なんて見え見えでこっちから誘う手間が省けて助かった。

ただその時が来るのが嫌で嫌で仕方なかった。

この繁華街を抜け1本裏道に入るとクリスマスのイルミネーションに混ざっていかにもって建物が見えてくる。
いざとなると逃げだしたくなる。

 「羽衣さん?」
今この世で一番聞きたくない声が聞こえた気がして振り向いた。



 





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