イヴ ~セカンドバージン~
その声はどんなに否定しても間違えるはずのない声で。
「郡山さん…」
なんとも言えない空気が流れている。
「羽衣さんも何かの集まりですか? 俺は高校の時の友達と飲んでて」
彼が繁華街の中の人気店を指さす。
「いえ私は…」
隣にいる上川先生の存在を気にしているだろう事は想像ついたが上手く説明できない。
「羽衣行くぞ。」
そんな私達のやり取りに痺れを切らした上川先生が私の腕を引っ張ると繁華街とは反対側に歩き出す。
この先にあるのは… きっと郡山さんにも察しはついているはず。
私ってどうしていつもこうなるんだろう。
郡山さんを失いたくなくてトラウマを克服したかっただけなのに、トラウマを克服する前に嫌われちゃった。
「もう必要ない。私帰る」
「何言ってんだよ。ここまで来て誘ったのはそっちだろ? さっさとホテル行って済ませてしまおうぜ」
わかっていたはずなのにこいつが最低な男だって。 私馬鹿だ。
「嫌だって言ってるでしょう。奥さんに言いつけるわよ」
「羽衣ふざけんなよ。」
睨みつける私に男が初めて腕を振り上げた。
叩かれる!!とっさに目を背けたが自分が男を挑発したこともわかっていた。
だけどその手は私にまでは届かなかった。