イヴ ~セカンドバージン~
「暴力を注意する立場の教師が弱い女性に手を上げるんですか?」
目を開けると上川先生の腕は郡山さんにきつく握られていた。
「お前には関係ないだろ。離せや」
「関係あるんですよ。 彼女は俺の大切な女性(ヒト)ですから」
「羽衣はそうは思ってないんじゃないかな? だから今日だって俺と」
私の気持ちの何をわかるっていうのよ?
勝手に決めつけて人の気持ち代弁しないでよ。
「いい加減にして!! あんたのせいで私がどれだけ傷ついたかわかる? あの日あんたが彼女を選んだせいで私がどんなに悩まされているか、あんたには想像も出来ないでしょうね。 私はあのクリスマスイブの日からHが出来なくなったのよ。いざとなると拒絶反応のように体が震えだして逃げ出すの。こんな身体じゃ人を好きになることさえ出来ないんだから。今日だってあんたと寝たらもしかしてトラウマを解消できるかもってただそれだけで好きでもないあんたなんかについてきたのに何もかも台無しよ」
こんなことを言わせる彼にもこんなことを言ってる自分にも情けなくて泣けてきた。
呆然とする上川先生の顔が滲んで見えたかと思うと涙が風に舞った。
「郡山さん?」
彼の手から伝わる温もりだけが温かくて、走り出した私達を冷たい夜風が包んだ。