濃いラブコメ
金屋武君は、気が優しくて力の強い、頼りになる同級生だ。よく授業の資材運びや、クラス会議の仕切りなんかを手伝ってくれる。口調はぶっきらぼうだけど、いつもぼくに優しく接してくれる、いいひとだ。
その金屋君が、いぶかしげな顔をして、女装姿のぼくを見下ろしていた。
心臓がばくんとはねあがった。
見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた。
ぼくの女装趣味が、クラスメイトにばれてしまった
噂が広まる。教師の耳に入る。問題になる。親が呼び出される。
嫌な展開のイメージが、一瞬で頭を駆けめぐった。
「大丈夫か?」
金屋君が、手をさしのべてきた。
その声色を聞いて安心した。
どうやら、ぼくだと気づいていないようだった。濃いめに化粧をしておいてよかった。
ぼくは自分で立ち上がった。そして金屋君と目をあわさないよう、うつむきながら、ごめんなさいとつぶやくと、背を向けて走り出した。
早く教室にもどって着替えないと!
急いだ。慣れないハイヒールに足をくじきそうになりながらも、我慢して全力で走った。
「うおおおおおっ!」
教室にもどると、ゴスロリの服を全て、引きちぎるような勢いで脱ぎ捨てた。そしてそれをバッグにねじこむと、ウェットティッシュで乱暴に化粧を拭い落とす。早くしないと、金屋君がやってきて、見つかってしまう。着替えるところを目撃されたら、さすがにアウトだ。