楓 〜ひとつの恋の話〜【短】
「楓」
私の名前を付けてくれたのはおじいちゃんで、“楓”は一番好きな言葉だと言っていた。
ふと頭の片隅でそんな事を思い出しながら顔を上げると、おじいちゃんは目尻のシワを更に深くした。
「今日はミルクはやめて、砂糖を少しだけ入れなさい。それで、クリスマス特製ブレンドの完成だ」
目を大きく見開いたのはその飲み方に覚えがあるからで、今の自分(ワタシ)にはとても気の進まない事だった。
だけど…
笑顔のままシュガーポットを差し出され、仕方なくそれを受け取る。
ジクジクとした胸の痛みを堪え、いつもあの男性がしていたように砂糖をほんの少しだけ入れて混ぜた。
再び口にしたコーヒーは、私には甘さが足りなくて素直に『美味しい』とは言えなかったけど…
その苦味は、今の気持ちとよく似ている。
おじいちゃんはどこか満足げに微笑むと、店先に置いてある看板を持って入って来た。
それからは誰も口を開く事も無く、カップとソーサーが生み出す音とレコードから流れる音楽に耳を傾けながら、コーヒーを飲み続けた――…。
私の名前を付けてくれたのはおじいちゃんで、“楓”は一番好きな言葉だと言っていた。
ふと頭の片隅でそんな事を思い出しながら顔を上げると、おじいちゃんは目尻のシワを更に深くした。
「今日はミルクはやめて、砂糖を少しだけ入れなさい。それで、クリスマス特製ブレンドの完成だ」
目を大きく見開いたのはその飲み方に覚えがあるからで、今の自分(ワタシ)にはとても気の進まない事だった。
だけど…
笑顔のままシュガーポットを差し出され、仕方なくそれを受け取る。
ジクジクとした胸の痛みを堪え、いつもあの男性がしていたように砂糖をほんの少しだけ入れて混ぜた。
再び口にしたコーヒーは、私には甘さが足りなくて素直に『美味しい』とは言えなかったけど…
その苦味は、今の気持ちとよく似ている。
おじいちゃんはどこか満足げに微笑むと、店先に置いてある看板を持って入って来た。
それからは誰も口を開く事も無く、カップとソーサーが生み出す音とレコードから流れる音楽に耳を傾けながら、コーヒーを飲み続けた――…。