楓 〜ひとつの恋の話〜【短】
「それに、実らない恋があっても、“何ひとつハッピーエンドにならない人生”はない。もちろん、“君達”の人生だって例外じゃないさ」
「「え?」」
そこでようやく、自分だけに向けられていた言葉では無いのだと気付き、思わず左側を見てしまった。
椅子二つを隔てた距離にいる男性客と、真っ直ぐに目が合う。
もしかしたら、彼にも似たような事があったのだろうか。
その答えはわからないけど、私を見つめたままの男性も同じような事を考えている気がした。
「もうすぐ、今年のクリスマスが終わる。……明日はきっと、いい日になるさ」
何の根拠も無い言葉だけど、本当にそんな気がして来るから不思議だ。
そんな風に感じるのは、現実から切り離されたようなこの喫茶店のせいか、おじいちゃんのせいか。
その両方だとわかっていたからこそ、ほんの少しだけ笑みが零れた。
「メリークリスマス、若者達よ」
おどけたように笑ったおじいちゃんに、微苦笑を零して「メリークリスマス」と返す。
すると、左側からも同じ言葉が聞こえて来た。
「「え?」」
そこでようやく、自分だけに向けられていた言葉では無いのだと気付き、思わず左側を見てしまった。
椅子二つを隔てた距離にいる男性客と、真っ直ぐに目が合う。
もしかしたら、彼にも似たような事があったのだろうか。
その答えはわからないけど、私を見つめたままの男性も同じような事を考えている気がした。
「もうすぐ、今年のクリスマスが終わる。……明日はきっと、いい日になるさ」
何の根拠も無い言葉だけど、本当にそんな気がして来るから不思議だ。
そんな風に感じるのは、現実から切り離されたようなこの喫茶店のせいか、おじいちゃんのせいか。
その両方だとわかっていたからこそ、ほんの少しだけ笑みが零れた。
「メリークリスマス、若者達よ」
おどけたように笑ったおじいちゃんに、微苦笑を零して「メリークリスマス」と返す。
すると、左側からも同じ言葉が聞こえて来た。