甘い恋の始め方

意外と過保護

翌日の朝、熱がまだ38度近くあったが、薬のおかげで夕方には37度まで下がった。

昨日着ていた服に着替えて階下に降りると、母が驚く。

「まだ熱があるのに帰るの?」

「大した熱じゃないから家に戻っても大丈夫よ。明日は会議があるし」

「そうなの? 良い人を見つけたんだから、仕事もほどほどにしなさいね? 早く孫を見せてもらわないと」

母親は悠也と結婚する前から夢を見ているようだ。

(なんて先の話を……)

「あ、お父さんに送ってもらいなさいな。さっきそんなこと言っていたから」

「はーい」

送ってほしいと言うと、居間のテレビでゴルフを見ていた父はいそいそと車の鍵を手にして外へ出た。

******

翌日、昨日と変わらずに体調はあまり良くなかったが、母に言った通り今日は会議があり休むわけにはいかない。

会社に向かう電車の中でスマホに悠也の不在着信を知り、一昨日電話をすると言ってくれていたのを思い出す。

(全然気づかなかった。会社に着いてから電話をしよう)

昨晩は父親に送られてから眠り、一度も起きなかったのだ。

< 193 / 257 >

この作品をシェア

pagetop