甘い恋の始め方
理子も背筋をただし、対面に立った悠也を見上げる。

「……時間が少し空いたので、参加させていただきます」

少しばつの悪そうな表情の悠也は視線を理子に向けたまま、空いているパイプ椅子に腰を掛けた。

悠也がいるだけで、先ほどとは打って変わって空気が張りつめた感じを受ける。

いくら婚約したとしても、この場では上司。体調が悪い理子もみんなと同じように緊張してしまう。

プロジェクトマネージャーが悠也へコンセプトの説明をしているが、説明を聞いている彼の視線が自分の左手をみていることに気づいた。

(あ……指輪!)

少しゆるい指輪なので、落とさないように家に置いてきたのだ。

婚約したことを今はまだ2課のみんなに知られるのも恥ずかしい。

相手がわが社の副社長でなく、他の人であれば普通に報告できたかもしれない。

じっと見られる左手を理子は気にしない風を装った。

会議の時間は2時間ほどだったが、本当に理子には長く感じられた。


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