甘い恋の始め方
診療所からもらった薬を飲むと一息つく。

「お料理、上手なんですね」

「家政婦に教え込まれたんだ。これからの男は自炊できないとダメだって言われてね」

「私が作るおかゆより美味しかったから、悠也さんが病気のとき困りますね」

「そう言えば理子の手料理を食べたことがないな」

「レパートリーは少ないんです。だからレシピを見ながらお料理しても幻滅しないでくださいね」

「もちろん。一生懸命作ってくれる料理だから、どんな味でも美味しく食べよう」

「どんな味でもって……」

悠也の冗談に理子は苦笑いを浮かべる。

「さあ、寝よう」

引き締まった身体がベッドに横たえられた。そして理子の身体を抱き寄せ、腕枕をしてくれる。

理子が眠りに落ちる時に考えたのは、とても幸せだということだった。1ヶ月前の自分には考えられないほどの幸せだった。
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