甘い恋の始め方
「悠也、理子さんのような方とご縁が出来て本当に良かったと思っているの。結婚を急かしてしまって心配だったけれど」

そこで康子はためらうように言葉を切った。

「どうしたんですか? 気にかかることでも?」

神経質になっているようだと、悠也は康子の顔を見て思った。

「ええ。悠也、これから話すことを聞いて、婚約を解消するなんてことはないわよね?」

「なんですか? いきなり。もちろん何を聞いても彼女と結婚しますよ」

「本当ね? じゃあ、話すわ。これ以上騙すのは心苦しくて……」

「騙していた?」

なんのことか思い当たらず、悠也は片方の眉を上げて康子を見る。

「あなたに早く結婚をしてもらいために余命を偽ったのよ」

「余命を偽ったとは? 先日、半年だと……」

「半年と言うのは嘘なの。一年というのも。経過観察だけれど、まだ数年は生きられるのよ」

「康子さん!」

悠也は珍しく大きな声を出すと、ソファから立ち上がり康子の元へ行く。

「ごめんなさい。あなたは結婚するつもりがないみたいだったから……心配で……」

康子の横へ悠也が座る。言い訳する康子に、悠也はいたずらをする子供のような笑顔を浮かべ抱きついた。

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