甘い恋の始め方
「偽りはない。君を愛している。自分の気持ちに気づくまで時間がかかってしまってごめん。君を愛していると康子さんと篠原さんに気づかされたよ。それから……君をもっと深く愛していることに気づいたのはさっきなんだ。君にもしものことがあったらと思ったら足がすくみ心臓が張り裂けそうなほど怖かった」

「っ……悠也さんっ!」

理子はイスから離れると、悠也の首に腕を絡ませ抱きついた。

受け止められる身体。

悠也は一緒に立ち上がらせると、唇にふんわりと慈しむようなキスをした。

「怖くて……どうしてもう一度良く考えてほしいなんて言っちゃったんだろうとか、愛されなくても良いから……結婚するだけで十分だから……と旅行先からすぐにでも戻ってお願いしようかと……」

旅行中、理子はなにもかも考えずにこのまま結婚したいと結論を出したが、その反面愛されないことが怖くて結婚を取りやめても良いと心は揺れていた。

「俺を愛してくれてありがとう」

頬に伝わる涙を唇ですいとり、抱きしめる。

「出会った日、あのまま君を帰したくなかった。欲望だと思っていたけど、そうじゃないって今ははっきり言える。キスをした瞬間、俺は君が好きになっていたんだ」

「私はあのとき、悠也さんに抱かれたのが信じられなかった。ずっと憧れていた人だったから。悠也さんと会うほどに強い思いになって、それと同時に苦しかったの」

「もうそんな思いはさせない」

悠也は啄むようなキスをすると、理子を抱き上げた。

「食事は?」

寝室に足を向ける悠也にたずねる声は甘い。

「食事よりも理子が食べたい。せっかくの食事の美味しさは半減してしまうだろうけど、今は君を堪能したい」

熱い視線に絡め取られ、理子は完璧な形の唇にキスをした。

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