甘い恋の始め方
腕につけた腕時計で時間を確かめると、かなり遅い時間だった。

「もう帰らないと……」

(終電に乗れるだろうか……タクシーで帰ればいいか)

などと、お酒を飲んだ勢いで懐が大きくなっている。

「お酒、ごちそうさまでした」

ふらっとイスから立ち上がって悠也に頭を下げると、足元がよろけて腕を支えられる。

自分の力で歩こうとする理子だが、ぐにゃりと毛足の長いじゅうたんに沈んでしまいそうで、悠也の手を借りていた。

「君はまた将来の旦那を求めてパーティーに参加するんですか?」

「そうですね~ 今度参加したら、悠也さんみたいなイケメンがいないといいです」

酔っぱらった頭は、普段口に出来ない言葉も出てきて正直者にさせる。

「どうしてですか?」

「だって、他の人が目に入らなくなるから……です」

「俺のこと気に入ったんですか? 将来の旦那として見られますか?」

「え……なんの――んんっ――」

ロビーへ降りる階段の少し手前、理子は突然悠也に唇を奪われた。

啄むように唇を食まれてから、今のキスで酔いが醒めた瞳を合わせる。

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