甘い恋の始め方
「浩太です。久しぶりです」

翔と別れてからヘアサロンを変えたから、彼と会うのも2年は経っている。

専門学校を出たばかりあの頃から比べると洗練されている。

水色のV字のサマーセーターにジーンズ、髪は美容師だけあってブラウンの髪にそれより明るめのメッシュを入れて動きを出している。

その姿は翔に似ている気がした。

「翔さん、まだミューズにいますよ。俺もですけど」

「そうなんだ……じゃあね」

別に翔の話なんて聞きたくない。そう思って、立ち去ろうとした。

「理子さん! これから時間ありますか!?」

驚いて浩太に振り返る。

「それってどういう意味?」

たしか彼は24歳くらい。

5歳も年上の女に何のようなの?と、率直な声を出していた。

「お茶しませんか?」

「お茶……たった今飲んだばかりだけど?」

「あ、そうでしたね。じゃあ、散歩でも」

(散歩?)

「悪いけど、これから買いものして帰るわ」

「そんな! 少しだけで良いんです。時間大丈夫でしょう?」

子犬のような瞳で見つめられて、理子は迷う。

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