甘い恋の始め方
「じゃあ行ってくるね」

「あ、理子!」

バッグを手にしてドアへ向かうと、加奈に呼ばれ振り返る。

「焦る必要はないんだからね!」

「うん。わかってる」

理子は返事をすると、部屋を出てエレベーターホールに向かった。

このビルは駅に直結しており、そのまま地下へ降りる。

理子のパールベージュのヒールの音がカツカツと地下道に反響する。

(18時30分か、19時に銀座だから余裕で間に合うよね)

この日のために妹から借りてきた華奢な腕時計に目を落として先を急ぐ。

この可愛らしいワンピースも4歳年下の妹 愛美(まなみ)のもの。

現在25歳の妹は2年前に結婚し、実の親と同居している。いわば旦那様はマスオさん。

この結婚を機に理子は家を出て、ワンルームマンションに一人暮らししている。

家賃が高い代官山のおしゃれなワンルームマンションにしてしまい、遊ぶ余裕があまりないのが現状。

六本木から日比谷線で銀座まで。場所はミシュラン3ツ星の有名なイタリアンレストランだ。

出口を間違わなければ、徒歩1分。

今までデートしていたのは新宿、渋谷、代官山などで、銀座には詳しくない理子は日比谷線の銀座駅で降りると、案内板を頼りに出口を探す。

銀座で待ち合わせといったらこのビル!というくらい有名なビルに到着した。

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