甘い恋の始め方
そんな恩のある叔母の言うことは聞いてやりたい。

叔母が結婚しろと言うのならしてもいい。そう思ったが、現在悠也に恋人はいない。

叔母がそこまで結婚を悠也に強要するのには理由がある。

自分は結婚しなかったが悠也がいた。

肉親がいたことで仕事の支えになり、心強かった。

康子は自分が死んだら、悠也がひとりっきりになってしまうのを心配していた。

甥は誰が見てもイケメンで、女性からモテないはずはない。

そうわかっていても、この年になるまで結婚の「け」の字も出てこなかった。

人生の伴侶を見て安心してから逝きたいと願う康子。

それからだった。悠也にお見合いを勧め、何度も女性と会わせてきた。だが、悠也は結婚してもいいと思う女性に出会えない。ならば、もう少し出会う枠を広げ、婚活パーティーに出てみてはどうかと考えた康子だった。

「叔母さんも考えたな。婚活パーティーなら女性も選べるしな。お前なら絶対モテるぞ。何回かパーティーに出ていれば人生の伴侶が見つかるさ」

「そう簡単に……愛する奥様がいる男は適当ですね」

篠原は悠也の大学の先輩で、大学の頃から付き合っていた彼女と3年前に結婚した。

付き合って結婚を決めるまで10年経った。

それまで間、別れたりまた付き合ったりと忙しいふたりだった。

今はなんでもっと早く結婚しておかなかったのかと時々悔やむセリフを聞く。

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