甘い恋の始め方
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自宅マンションへ戻ってきた悠也はそのままキッチンへ行き、氷が入ったグラスにウイスキーを注ぐ。

トクトクと流れる音にカランと氷の音色。

半分ほどグラスにウイスキーを満たすと、一気に飲み干す。

理子のキッチンで後から抱いたとき、あの場で押し倒し欲望のままに行動してしまいたかった。

それをしなかったのは、自分が身体目当てではないことを知ってほしかったからだ。

(無邪気に煽られ、俺の自制心が崩れそうだったな)

空のグラスをテーブルに置き、再び琥珀色の液体を注ぐとソファに腰を下ろす。

土曜日の昼過ぎ、叔母 康子との会話を思い出す。

予測していた通り電話がかかってきた。

『悠也、婚活パーティーはどうだったの? すてきな人は見つかった?』

「康子さん、そう簡単に出会えるわけがないだろう?」

『まただめだったの?』

電話の向こうで康子が漏らした落胆のため息が聞こえる。

康子のがっかりした様子を思い浮かべると、理子のことを話したくなる。

(いや、まだ早い)

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