甘い恋の始め方
19時に仕事を終わらせて、渋谷に向かう。

渋谷のハチ公前が見えてくると、たくさんいる待ち人の中に浩太を見つけた。

視線を彷徨わせていた浩太は、理子の姿が目に入った途端にっこり笑い手を挙げる。

「ごめんね、待たせちゃった?」

「それほどでもないよ。何が食べたいですか?」

「居酒屋がいいわ」

「それって、俺に気をつかってる?」

「気なんて使っていないわ。久しぶりに居酒屋メニューが食べたくなったの」

「それならいいけど。じゃあ、行きますかっ」

ハチ公前から5分と歩かない居酒屋へふたりは入った。

注文を済ませてすぐにビールと生グレープフルーツハイが運ばれてきた。

半分切られたグレープフルーツを絞ろうとすると、浩太に奪われる。

「これは男の役目でしょ?」

おしぼりで手を拭いた浩太はグレープフルーツを手にする。

「あ、ありがと」

「翔さんはやってくれなかった?」

浩太の手でそれほど力を入れずに絞られていくグレープフルーツ。



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