甘い恋の始め方
「翔は……そうだね。やってくれなかったかな」

「俺は翔さんとは違いますからね」

「それは浮気性じゃないってこと?」

「もちろん。理子さんだけしか見ません」

愛の告白ともとれる言葉に理子は戸惑い、浩太の手元に視線を落とす。

「あ、ありがとう」

理子は果汁の入ったスクイザーを取り、グラスの中へ入れる。

「こんなセリフで戸惑う理子さんって、すごく可愛いです」

「からかわないでね」

「乾杯しましょう!」

浩太はグレープフルーツで濡れた手をおしぼりで拭いてから、ビールのジョッキを持ち上げた。

乾杯を済ませ、飲んでいると料理が次々と運ばれてきた。

いつの間にか4人掛けのテーブルの上には料理でいっぱいになる。

「ちょっと頼みすぎじゃない?」

「大丈夫です! 残ったら平らげますから。食べましょう」

一緒に食べて飲んで、ふたりきりなのに悠也といる時みたいに胸が高鳴らない。

弟はいないがいたらこんな感じなのかなと、料理を豪快に食べる浩太を見ながら思う。



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