甘い恋の始め方
不在着信の番号にかけてみる。

最後にかかってきたのは5分前。

呼び出し音が鳴ったと思ったら、悠也の声が理子の名前を呼んだ。

『理子さん、なにかあったんですか?』

悠也の声の心地よさにくらっとなりそうになる。

「昨日、スマホが濡れてしまって番号が……」

『そういうことでしたか……よかった。何かあったのかと、日本へ戻ろうか考えていたんです』

「え……」

『嘘ではないですよ』

(本当に? 嬉しすぎる言葉なんですけど……)

顔がニヤケそうになったところで、ハッとなる。

(目の前に加奈がいたんだった)

『理子さん?』

「あ、はい」

『今週の土曜日、日本へ戻ります。また月曜日に戻らなくてはなりませんが。2日間、俺のために空けられますか?』

強引に言われるのがこんなにうれしいとは思わなかった。

「は、はい。大丈夫です」

『また連絡します』

「おやすみなさい」

悠也が切るのを待ってから、理子は終了を押した。

< 86 / 257 >

この作品をシェア

pagetop