甘い恋の始め方
「上海の出張だって長いらしいじゃない。中国人美女と出来ちゃうかもしれないわよ?」

「出来ちゃうって……」

(そう言われると、だんだん心配になってきた。でも、また連絡するって言ってくれたし……あ、それって私また受け身になってる?)

「電話はかかってきた?」

前向きになろうと思っているそばから、加奈が不安になることを言う。

「昨日かかって来たんだけど、スマホが濡れちゃって出られなかったの」

「やだ、ドジなんだから。今日はないの?」

今日は昨日の教訓から注意してバッグの中にスマホを入れておいた。

取り出してみると、名前のない番号から3回不在着信が入っていた。

「あ……」

(浩太の番号は昼に登録したから、これは彼じゃない)

「どうしたの? 電話あったの?」

加奈が身を乗り出して聞いてくる。

「あ、うん。名前が出ていないからおそらく……間違い電話じゃなければ」

「早く電話しなさいよ」

「え? でも」

「大丈夫よ。聞いているのは私しかいないから」

個室のように仕切られているので、他の人には迷惑がかからないだろう。

3回も電話が着ていることに気づかず、理子は内心焦っていた。

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