ウェディング・チャイム
翌日、スッキリ目覚めた……とは言い難い状態でベッドから上半身を起こした。
二日酔いになるほど飲んではいないし、甲賀先生のドリンク剤も効いているはずなのに、酷い頭痛。
これはきっと熱があるに違いない。
カラオケだって一曲しか歌っていないのに、喉が痛くて唾を飲み込むのも辛い。
扁桃腺が腫れて熱を出してしまう、いつものパターンだ。
電子音が3回鳴って、体温計を見てみた。
……三十九度を超えている。
これは、甲賀先生とお出かけどころじゃないかも。
連絡しなくては、と思ったところで気が付いた。
……甲賀先生の連絡先は、携帯以外知らないということに。
確か、学級連絡網には自宅の番号を載せているって言ってたはずだけど、職員連絡網は確実に繋がる番号ということで、携帯を載せる先生がほとんど。
肝心な携帯が壊れているということは、こちらから連絡できないじゃないの!!
念のため、甲賀先生の携帯に電話してみたけれど、やっぱり繋がらなかった。
仕方がない、迎えに来てくれた時に謝ろう。
約束の時間になった。
甲賀先生の車がアパート前に到着したので、こちらから玄関のドアを開ける。
「藤田ちゃん、おはよう。昨日はお疲れ様……って、あれ?」
私の顔をじいいっと見つめる甲賀先生の表情が、笑顔から真顔になってしまった。
あんまり見ないでください、何しろマスクの下はほぼすっぴんですから。
「もしかして、具合悪いのか?」
甲賀先生の声を聞いたら、思いがけず目頭が熱くなった。これはきっと高熱のせい。
「熱でもあるんじゃないか?」
優しい声で問われた後、クラスの子どもにするのと同じように、大きな手が私の額に当てられた。
普通、男の人って彼女でもない女性にそんなことしませんから! 職業病ですよ!
……なんて、普段の私なら言うはず。でも、今は甲賀先生の冷たい手が気持ちいいとさえ思ってしまう。
「予定変更、まずは病院へ行こう」
頷いたら、ぽろりと涙がこぼれた。