ウェディング・チャイム

「でも、藤田ちゃんは意外と大人だよな。さっき、ちゃんと俺と八木先生の両方を立てるのを見てそう思った。見た目は子ども、中身は大人なんて最強の組み合わせだよな」

「どこかの名探偵じゃないんですからっ!」

「あ~、わかった? ノリもいいし、気に入ったよ」

「……それはどうもありがとうございます」

 これから約一年ずっと一緒に仕事をするパートナーだから、気に入ってもらえるのは素直に嬉しい。

 だけど、このタイミングで面と向かって褒められるなんて思ってもみなくて、恥ずかしくて照れ笑いしながらお礼を言ったら、甲賀先生が急に真顔になった。

 そして、少し声のトーンを落として言われたのは……。

「よく、この仕事を引き受けてくれたと思うよ。せっかく教員人生初の担任だっていうのに、いきなり最高学年の、ちょっと大変なクラスの後任になっちゃったんだもんな。これから俺も精一杯フォローするから、一緒に頑張ろう。来年三月の卒業式が終わった時、この道を選んで良かったって思えるように、な?」

 笑顔で同意を求められて、頷いた私を見た甲賀先生が、またこっそり言った。

「どうしても今日、これを伝えようと思ってたんだ。年度末はお互い忙しかったし、なかなか言う機会がなくってさ」

 ……きっと甲賀先生は知っていたんだ、私も担任を引き受けるまで、悩みぬいたことを。

 自分にとって荷が重すぎる仕事を引き受けてしまって、不安で押しつぶされそうで、助けを求めていたのを。

 私が安心してこれからの仕事に取り組めるように、新年度初日の今日、この話を伝えようと機会をうかがっていたのかも知れない。

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