恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


明らかに若い女の子が大好きだって叫びたくなるような造りではあるけど、若い女の子にはお財布に厳しすぎる。
だからと言って男の人が住むにはメルヘンチックすぎるというか、雰囲気が合わなそうだし。

新婚夫婦とかだろうか。

今まで外観だけでお城みたいだとか思っていたけれど、エレベーターまで乗ってみた感想も、まるでお城だ。

エレベーターの扉が開いたのは、五階。
首の高さまである塀越しに夜景が見えて、思わず見入っていると、そんな私に気づいた和泉くんが歩きながら顔半分振り向く。

「そこから飛び降りるのもやめて欲しいんだけど」

飛び降りる?と復唱してから、そういえば和泉くんが自殺だとかなんとか言っていた事を思い出す。
どうやら自殺しようとしていると思われてるらしい。

否定しようと思ったけれど、それよりも早く和泉くんが立ち止まって部屋の鍵を開ける。

506号室。
エレベーターから降りて、一番奥の部屋だった。

ドアを開けた和泉くんに、どうぞと言われて玄関に入る。
そのまま靴を脱がずに立って待っていると、ついていかなかったからか、振り返った和泉くんに顔をしかめられた。



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